ゴルフコンペに参加すると、そのコンペの主催者あるいは幹事さんからプレー前に「本日はスルーザグリーンノータッチです」あるいは「本日はスルーザグリーン6インチプレースOKです」といったルールの説明があったりします。ゴルフの経験も浅く、初めてコンペに参加した場合などは、ノータッチ?6インチプレース?スルーザグリーン?と、戸惑った経験をお持ちの方も少なからずおられるのではないでしょうか。
知人同士のプライベートでのラウンドではこのような概念はあまり意識しませんが、コンペとなるとルールというものを軽視できません。
ここでは数ある遵守すべきゴルフルールの中でも、特に「ノータッチ」及び「6インチプレース」というルールについて詳しく説明したいと思います。
「スルーザグリーン」とはどこを指すのかを知ろう
ゴルフコースの中でスルーザグリーンとは、ティーショットを打つティーグラウンド、グリーンそして池やバンカーといったいわゆるハザードといわれる場所を除いたエリア、つまりフェアウェーとラフのエリアを指します。
このスルーザグリーンというエリアにおいて関連してくるルールの一つが「ノータッチ」及び「6インチプレース」ということになります。
「ノータッチ」とは?
ノータッチとは、ゴルフ競技の際にスルーザグリーンにおいてボールに触れることなくプレーをすることを指します。
もしも、ボールを動かしてショットしてしまうと、誤所からのプレーとして2打罰のペナルティーを受けることになります。
ゴルフ規則として、「規則に別の規定がある場合を除き、球はあるがままの状態でプレーされなければならない」と規定されており、プロの競技では余すことなく、このルールに則ってプレーが行われます。ノータッチとはゴルフをプレーする上での大原則ルールであると言えます。
但し、スルーザグリーンにおいてボールが止まった位置が、排水口の上であったり、カート道上であったりと動かせない人工物にかかる状態となった場合は無罰で救済措置を受けることができるルールも規定されています。
「6インチプレース」とは?
このルールは次のようなケース及びやり方で行使します。
- スルーザグリーン上で止まったボールの位置の芝が他者によるショットで削り取られていたり、極端に凹みがあったりした場合
- 今ある位置から無罰でグリーン上のカップに近づかず6インチ(15.24cm)以内の範囲で動かすことができるというものです。
- 動かす際はボールをドロップ(肩の高さから落とす)ではなくプレース(置く)するようにしましょう。
このルールはあくまでローカルルールであって、現在のゴルフ規則では規定されていません。よってプロの競技ではこのようなルールは一切適用されていません。
通常のラウンドやアマチュアが行なうゴルフコンペなどで「6インチプレースOK」が適用されるのには大きく分けて2つの理由が挙げられます。
- 悪天候や芝の生育が不十分な状態においてプレーをするには悪条件となっている場合に主にコース保護の目的でゴルフ場側が打ち出す場合
- コンペ参加者のレベルを考慮してプレー進行をスムーズにすることを目的としてコンペ主催者側が優遇措置として適用する場合
となります。
コンペ主催側による優遇措置で当該ルールが適用される場合は、次のショットをする上で極端に難易度が上がる状況下にボールがある場合は必ず同伴者に宣言し、了解を得た上でボールを動かすという姿勢を厳守しましょう。
プレーヤーが単にボールを、より打ちやすい状態にしたいからといって度々にボールを動かすのはいかがなものかと思います。繰り返せば、2打罰対象となりますので留意しましょう。
私も経験上、次のショットが困難ではないにもかかわらず、ボールを動かすプレーヤーをよく見かけましたが、友達同士でラウンドしている場合はいざ知らず、コンペでは絶対にやめましょう。可能な限り本来のゴルフ規則に則ったプレーを心がけることがゴルフを楽しむ上でとても大切なことだと思います。
「6インチプレース」の由来とは?
現在のゴルフ規則にはないこの「6インチプレース」というルールの由来は、1865年の第6回全英オープンにまでさかのぼります。
当時はマッチプレーが主流だったのですが、一方の競技者がパットを行おうとした時、自身のボールとカップとの間に競技相手のボールがあったとしてもそれを動かすことができなかった。当時はこの状態を「スタイミー」と呼び、れっきとしたルールとなっていました。
正に「あるがままの状態でプレーする」という状況です。
よって競技者はあえてラインを外してパットを行なう、あるいは相手のボールを飛び越えてカップを狙うといったプレースタイルが実践されていたのです。
但し、このスタイミー規定には例外があり、グリーン上において相手のボールと自身のボールとの距離が6インチ以内にあった場合、相手にボールのピックアップを要求できるというもの。
そのときに6インチという距離を測る定規として活躍したのがスコアカードでした。現在でもそうですがスコアカードの横幅が6インチで作られているのはその時の名残りとなります。
当時は、現在当たり前のようにやっているグリーン上でマーカーを置いてボールを一旦拾い上げるという行為がありませんでした。そもそもマーカーというものが無かったのです。
このルールはマーカーを使ってボールを拾い上げることが可能となったことで、1952年にゴルフ規則から削除されています。
このように元来はグリーン上のルールだったものが、現在のような6インチプレースという考え方に変化し、スルーザグリーンに適用されるローカルルールとなったのです。
ゴルフにはプレーをする上で多くのルールが規定されていますが、今回はノータッチと6インチプレースという2つのルールについて少し掘り下げて説明させていただきました。ルールをしっかり理解して快適なゴルフライフを!
この記事のまとめ
- スルーザグリーンとはフェアウェーとラフのエリアを指す
- ノータッチとはあるがままの状態でプレーを行なうゴルフの大原則
- 6インチプレースとはゴルフ規則にないローカルルールである
- 6インチプレースとは本来コース保護の目的でゴルフ場が規定するもの
- コンペ主催者が規定する6インチプレースは参加者への優遇措置
- スコアカードの横幅が6インチだったことから生まれた6インチプレース
長い歴史の中で様々な改定が行われてきたゴルフのルールですが、その中でも不変のルールはやはりあるがままの状態でプレーを行なうという大原則。たとえ優遇措置としてのローカルルールが適用されたとしても、それに甘んじることなく大原則に則ったプレーを行なうことが本来のゴルフの醍醐味であると私は確信しています。